ディープ・パープル物語 第3章:変革の風、そして黄金期の幕開け

ハードロックへの傾倒:音楽性の転換

アメリカでの成功を収めたものの、リッチー・ブラックモアとジョン・ロードは、バンドの音楽性が必ずしも自分たちの理想とする方向へ進んでいないと感じ始めていました。彼らが目指したのは、よりヘヴィでブルージー、そしてエネルギーに満ち溢れたハードロックサウンドでした。

初期のアルバムでは、サイケデリックな要素やクラシカルな影響が色濃かったディープ・パープルですが、ライブパフォーマンスを重ねるうちに、より即興的でパワフルな演奏を追求するようになっていきます。特にリッチー・ブラックモアのギタープレイは、ブルースロックの影響を受けつつも、独自の攻撃性を増していきました。

メンバー交代の波紋:ロッド・エヴァンスとニック・シンパーの脱退

音楽性の変化に伴い、バンド内には徐々に不協和音が生じ始めます。特に、甘いヴォーカルを持ち味とするロッド・エヴァンスと、よりハードなサウンドを求めるバンドの方向性との間にギャップが大きくなっていました。また、ベーシストのニック・シンパーも、音楽的な意見の相違からバンドとの溝が深まっていきます。

そして1969年、ディープ・パープルは大きな決断を下します。ロッド・エヴァンスとニック・シンパーの脱退が決定したのです。この突然のメンバー交代は、初期からのファンに大きな衝撃を与えましたが、バンドにとっては新たなフェイズへと進むための必然的な選択でした。

イアン・ギランとロジャー・グローヴァーの加入:黄金のラインナップ誕生

新たなヴォーカリストとベーシストを探していたディープ・パープルは、当時Episode Sixというバンドで活動していたイアン・ギランロジャー・グローヴァーに目をつけます。リッチー・ブラックモアとジョン・ロードは、ギランのパワフルなヴォーカルと、グローヴァーの堅実なベースプレイに大きな可能性を感じました。

1969年6月、イアン・ギランとロジャー・グローヴァーが正式にディープ・パープルに加入。ここに、リッチー・ブラックモア(ギター)、ジョン・ロード(キーボード)、イアン・ペイス(ドラムス)、そして新加入のイアン・ギラン(ヴォーカル)、ロジャー・グローヴァー(ベース)という、後に「マークII」と呼ばれる黄金のラインナップが誕生します。

この5人によるケミストリーは、バンドのサウンドを劇的に変化させます。ギランのシャウトを活かしたヘヴィな楽曲、ブラックモアの攻撃的なギターリフ、ロードの荘厳なキーボード、ペイスのパワフルなドラム、そしてグローヴァーの安定したベースラインが一体となり、ディープ・パープルはハードロックバンドとしての新たな आइडेंटティを確立していくのです。

次回予告

第4章では、マークIIのラインナップで制作された記念すべきアルバム『イン・ロック』の誕生秘話、そして「ブラック・ナイト」「スピード・キング」といったハードロック史に残る名曲の数々について深く掘り下げていきます。ご期待ください!

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