ディープ・パープル物語 第18章:再燃する確執と『ハウス・オブ・ブルー・ライト』

成功の裏で忍び寄る不協和音

1984年の奇跡的な再結成と、アルバム『パーフェクト・ストレンジャーズ』の大成功を受けて、ディープ・パープルは大規模なワールドツアーを敢行しました。アメリカ、ヨーロッパ、そして日本。行く先々でスタジアムは熱狂的なファンで埋め尽くされ、バンドは健在どころか、全盛期を思わせるほどのエネルギーを放っていました。

しかし、この輝かしい成功の裏側で、かつてバンドを分裂させた悪夢が再び鎌首をもたげ始めていました。それは、リッチー・ブラックモアとイアン・ギランという二人の天才の間の、根深い確執でした。再結成当初は、大人としての距離感を保っていた二人でしたが、長期間にわたるツアー生活は、彼らの間に再び緊張をもたらします。音楽的な方向性、ステージ上でのパフォーマンス、そして些細なことから生じるエゴの衝突が、バンド内に不穏な空気を漂わせ始めたのです。

 

『ハウス・オブ・ブルー・ライト』:困難を極めた制作

ツアーを終えたバンドは、次なるアルバムの制作に取り掛かります。しかし、そのレコーディングは困難を極めました。メンバー間のコミュニケーションは希薄になり、それぞれが別々のスタジオで自分のパートを録音することもあったと言われています。かつて『マシン・ヘッド』を生み出したような、バンド一丸となっての創造的なセッションは、もはや望めない状況でした。

そんな中で1987年1月にリリースされたのが、アルバム『ハウス・オブ・ブルー・ライト (The House of Blue Light)』です。このアルバムは、80年代的なデジタル・リバーブを多用したサウンドプロダクションが特徴で、前作の成功を踏襲しようという意図が感じられました。しかし、楽曲のクオリティにはばらつきがあり、バンドの一体感の欠如がサウンドにも表れてしまっている、と評されることも少なくありません。

それでも、「バッド・アティテュード (Bad Attitude)」や「コール・オブ・ザ・ワイルド (Call of the Wild)」といった楽曲は、彼らのポテンシャルの高さを感じさせるものでした。しかし、アルバム全体としては、『パーフェクト・ストレンジャーズ』ほどの衝撃や完成度には及ばず、ファンの間でも評価が分かれる作品となりました。

 

 

決定的となった亀裂

アルバムリリース後のツアーでは、リッチーとイアンの対立はさらにエスカレートします。ステージ上でお互いを無視するのは日常茶飯事で、時にはリッチーがイアンのヴォーカルパートで意図的に演奏を止めるなど、その関係は修復不可能なレベルにまで達していました。

他のメンバー、ジョン・ロード、ロジャー・グローヴァー、イアン・ペイスは、再びバンドが崩壊の危機に瀕していることを痛感し、苦悩します。奇跡の再結成からわずか数年で、ディープ・パープルは再び大きな決断を迫られることになったのです。

 

次回予告

第19章では、ついにイアン・ギランが二度目の脱退を余儀なくされるという衝撃の展開を追います。そして、リッチー・ブラックモアが後任ヴォーカリストとして選んだ意外な人物とは? 黄金期を築いたヴォーカリストの不在という事態に、バンドはどのように立ち向かうのか。ご期待ください!

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