ディープ・パープル物語 第13章:『カム・テイスト・ザ・バンド』と忍び寄る破滅の影

新たなるサウンドの探求:『カム・テイスト・ザ・バンド』

トミー・ボーリンという若き天才ギタリストを迎えたディープ・パープル マークIVは、早速スタジオに入り、新たなアルバムの制作に取り掛かります。バンド内の雰囲気は創造性に満ち溢れ、特にトミー・ボーリンとグレン・ヒューズの二人が中心となって、次々と新しい楽曲のアイデアが生まれていきました。

1975年10月、マークIV唯一のスタジオアルバムとなる『カム・テイスト・ザ・バンド (Come Taste the Band)』がリリースされます。このアルバムは、これまでのディープ・パープルのどの作品とも異なる、革新的なサウンドに満ちていました。ハードロックを基盤としながらも、ファンク、ソウル、ジャズ、レゲエといった多様な音楽要素が大胆に取り入れられ、非常に洗練されたクロスオーバーサウンドを展開しています。

トミー・ボーリンの変幻自在なギタープレイはアルバムの核となり、ファンキーなカッティングからメロウなフレーズ、そして激しいソロまで、多彩な表情を見せます。グレン・ヒューズのファンキーなベースラインとヴォーカルも健在で、デヴィッド・カヴァデールのブルージーな歌声と絶妙なコントラストを生み出しました。

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革新ゆえの戸惑い:ファンの反応

『カム・テイスト・ザ・バンド』は、音楽的には非常にクオリティの高い、意欲的な作品でした。しかし、その革新的なサウンドは、リッチー・ブラックモア時代のヘヴィなハードロックを期待していた多くのファンを戸惑わせることになります。

「これが本当にディープ・パープルのアルバムなのか?」

そんな声が上がるほど、サウンドの変化は劇的でした。商業的にはまずまずの成功を収めたものの、評論家やファンの評価は賛否両論に分かれ、バンドが意図したほどの熱狂的な支持を得ることはできませんでした。

 

忍び寄る破滅の影:薬物問題

音楽的な挑戦とは裏腹に、バンドの内部は深刻な問題を抱え始めていました。特に、新加入のトミー・ボーリンと、グレン・ヒューズの二人が重度の薬物依存に陥っていたのです。

彼らの薬物問題は、バンドの活動に深刻な影響を及ぼし始めます。レコーディングやリハーサルに支障をきたすだけでなく、ライブパフォーマンスのクオリティにもムラが生じるようになりました。特にトミー・ボーリンは、ライブ中に腕の神経を麻痺させてしまい、まともにギターが弾けなくなるという致命的なトラブルも起こしています。

デヴィッド・カヴァデール、ジョン・ロード、イアン・ペイスの3人は、バンドを立て直そうと奮闘しますが、二人の薬物問題は改善されることなく、バンド内の人間関係は悪化の一途をたどりました。かつての栄光は見る影もなく、バンドは崩壊の危機に瀕していたのです。

 

次回予告

第14章では、ついにディープ・パープルがその活動に終止符を打つ、衝撃の解散劇を追います。1976年3月のリヴァプール公演での出来事、そして天才ギタリスト、トミー・ボーリンを襲った悲劇とは? ひとつの時代の終わりを見届けます。ご期待ください!

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