ディープ・パープル物語 第16章:それぞれの道と再結成への序曲

NWOBHMの嵐と、パープル・ファミリーの隆盛

1970年代末から80年代初頭にかけて、ロックシーンは「ニュー・ウェイヴ・オブ・ブリティッシュ・ヘヴィメタル(NWOBHM)」の嵐が吹き荒れていました。アイアン・メイデンやサクソンといった新世代のバンドが台頭する中、ディープ・パープルの元メンバーたちが率いるバンド群、通称「パープル・ファミリー」もまた、それぞれが黄金時代を迎えていました。

 

レインボー:ポップ化と商業的成功

リッチー・ブラックモア率いるレインボーは、ヴォーカリストがロニー・ジェイムス・ディオからグラハム・ボネット、そしてジョー・リン・ターナーへと交代する中で、その音楽性を大きく変化させていきました。かつての様式美ハードロックから、よりキャッチーでラジオ向けのアメリカン・ハードロックへとサウンドを転換。「シンス・ユー・ビーン・ゴーン (Since You've Been Gone)」や「アイ・サレンダー (I Surrender)」といったシングルヒットを連発し、世界的な商業的成功を収めました。しかし、このポップ化路線は、リッチー・ブラックモアに新たな葛藤をもたらすことになります。

 

ホワイトスネイク:ブルース・ハードロックの雄

デヴィッド・カヴァデール率いるホワイトスネイクは、ジョン・ロードとイアン・ペイスという元ディープ・パープルのリズムセクションを得て、そのサウンドを確立。ブルースを基盤とした官能的かつパワフルなハードロックで、ヨーロッパや日本を中心に絶大な人気を誇りました。アルバム『フール・フォー・ユア・ラヴィング (Ready an' Willing)』(1980年)や『セインツ・アンド・シナーズ (Saints & Sinners)』(1982年)は、彼らの評価を不動のものにしました。

 

 

ギラン:ハードロックへの回帰と成功

ジャズロック路線から一転、ストレートなハードロックバンド「ギラン」として再出発したイアン・ギランもまた、イギリスで大きな成功を収めます。アルバム『ミスター・ユニヴァース (Mr. Universe)』(1979年)や『グローリー・ロード (Glory Road)』(1980年)は全英チャートの上位にランクインし、イアン・ギランはNWOBHMムーブメントの立役者の一人として、新世代のファンからもリスペクトを集めました。

 

水面下で動き出す「再結成」の噂

このように、元メンバーたちがそれぞれ大成功を収めているという事実は、皮肉にもファンの「ディープ・パープル再結成」への期待を日に日に高めていきました。特に、黄金期を築いたマークII(ブラックモア、ギラン、グローヴァー、ロード、ペイス)の復活を望む声は、世界中で渦巻いていました。

80年代初頭、水面下では実際に再結成に向けた交渉が何度も行われていたと言われています。しかし、各メンバーが自身のバンドで成功を収めていること、そしてかつての確執が、その実現を困難なものにしていました。ファンは、ただひたすらに伝説の復活を待ち続けるしかなかったのです。

 

次回予告

第17章では、8年間の沈黙を破り、ついに伝説が復活する瞬間を追います。1984年、世界中のファンが待ち望んだディープ・パープル マークIIの再結成と、アルバム『パーフェクト・ストレンジャーズ』の誕生。ロック史に残る奇跡の物語が始まります。ご期待ください!

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