「今日の一曲」の第4回。
映画「ロッキー」・・・、当時はまだ滅多に映画を観る機会など無かった高校生だったのだけれど、その高校生でさえ大方の内容は伝え聞いて知っていたほど日本でも大いに話題となった映画だ。
さて、今回はその映画「ロッキー」の挿入曲「ロッキーのテーマ」を取り上げる。が、今回ご紹介する盤とその一曲は、映画のスクリーンと共に表現された音たちとは少し違うものになる。では、高校生だった頃の時代に遡って語らせていただこう。
サウンド・トラック盤のものも映画シーンを想い返しながら重ねて聴くと、これはこれで、自然と気持ちが高まってきて力強く壮大さを感じて、なかなか好い気分にさせてくれるのではあるけれど、敢えて、音楽のみで聴くなら、メイナード・ファーガソン(Maynard Ferguson)のだ。
メイナード・ファーガソンはジャズ・トランぺッター。
個人的な見解でしかなく恐縮だが、後にも先にもトランペット吹きでこれほどまでのハイトーン(高音域の音)を出せる奏者は現れないだろうと想っている。
彼の唇と息の絶妙なコントロールによって生み出されるハイトーンは超人的としか思えない。それは突風のごとく勢いと速さを以って、が、しかし、その気流には一切の乱れもなく針の穴さえも通って吹き抜ける・・・そんな奇蹟の風だけが鳴らすことができる音・・・のように想えるのだ。
そのメイナード・ファーガソンのトランペット・ソロを軸に、言うなればビックバンド・ジャズのアレンジとして、更に当時は電子音楽器の発達著しい時代にもあって、この少し後にフュージョン系とされるサウンドの先駆けとも感じるアレンジが成された楽曲たち全6曲が一枚のアルバムに収録されて、1977年に登場する。
それがメイナード・ファーガソンのアルバム「Conquistador(征服者)」だ。
もちろん、アナログ・LPレコード盤だ。
この盤のA面の1曲目に、映画「ロッキー」の挿入曲「ロッキーのテーマ」をアレンジした曲が「Gonna Fly Now(ロッキーのテーマより)」として収録されている。
ベスト盤CDの復刻盤にも収録されていて、それも持ってはいるけれど、LPレコード盤で聴くほうが何故か心地好い。
メイナード・ファーガソンの音との出会いは・・・、
当時、同じ高校に通う先輩でドラムセットを叩いている先輩がいて、学校から帰宅する方向が同じこともあって、いろいろと話す機会が・・・それは音楽の話題も自然と増えて、その先輩とは仲良くしてもらっていた。
ある日、その先輩のご自宅に・・・、何故そうなったかは記憶にないのだけれど、泊まらせていただくことになった。夕食時は先輩のご家族とも食卓に交ぜていただいてご馳走になった。
それでその後のこと、先輩が、
「これ知ってるか?」
「半端ねぇぞ」
と聴かせてくれたのが、メイナード・ファーガソンのこのアルバムだった。
しかも、1曲目、「ロッキーのテーマ」をアレンジした曲は、サウンド・トラック盤の出だしとは全く違い、強烈なスピード感と爆発力をもって始まって、我が耳に容赦ない勢いで飛び込んできた。
メイナード・ファーガソンのそれこそ超人的なハイトーン、そこにバックで演奏するビックバンドの音がまたキレッキレッで、加えてすごいのが、ジェフ・レイトンのギター・ソロが、「カッコイイ~ッ!」。
その日に先輩の自宅に何故泊まらせてもらったのか?
何を先輩と話したのだろうか?
メイナード・ファーガソンの「ロッキーのテーマ」をアレンジしたこの曲の印象があまりに強すぎて、他に想い出せるものが何も残っていな~い(汗・笑)。
ともかく、それ以来、メイナード・ファーガソンのファンになった。
そして、このアルバムを、LPレコード盤を、どうしても手に入れたくなって、数日後には自宅近所のレコード店・・・優し気な物静かそうなオジさんが一人で営むレコード店で買ったのだった。
同盤に収録されている「Theme From Star Trek(スター・トレックのテーマ)」、アルバムタイトルにもなっている「Conquistador(征服者)」も心震わされる迫力と躍動感が詰まった曲で、特に好んで聴く。
が、やはり、最初に出会った時の強烈さは記憶に留まり続けているのだろう・・・、
今、ここで、元気をもらいたいときに、
勇気を感じたいときに、
または悔しいことがあったときに、
自分を信じたいときに・・・、
それは高校生だった頃から40年が経過した現在もで、奇蹟の風が鳴らす音とともに聴きたくなる、・・・そんな「今日の一曲」として、メイナード・ファーガソン「Gonna Fly Now ~ロッキーのテーマより~」をご紹介させていただいた。
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本文は、2016年10月15日に、愛間純人のホームページ「ブログ」に載せた原文を、このサイト「Musicians Plaza」用に改訂、加筆したものです。
2019年3月31日現在、「今日の一曲」シリーズの原文はNo.90(第90回)まで愛間純人のホームページで公開されています。
愛間純人のホームページ → https://www.aima-ongakuya.info/
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